おわび

やりたいことなんでも

▶︎ この動画は再生できません

 

はいこんにちは。

先日、『この動画は再生できません』というテレビドラマを見たので、その試聴体験記録兼、感想メモ兼、その他個人的なホラーに関するもろもろを書いてみる。

 

初手失礼な話だが、元々そんなに期待していなかったのである。ちょっと作業するからBGMがわりに流しておきますか〜というノリで見始めたものだった。というか、そもそも流し始めたのはわたしではなくツレであったし、1話が流れ始めたときはもうまさに「ほ〜ん、今風のB級ホラーっぽい感じですなあ」という目で見ていた。

このドラマは最初に『投稿動画』のパートがあって、後半ではその動画の真相が分かっていくという構成になっている。1話を見終わった時は、「おおそういうテイストのホラー作品なのか、いいじゃん」という気持ちになり、2話を見終わった時にはこう思っていた。

あれ?めっちゃ面白くないかこのドラマ…!?

 

そうして全話見終わったあと、それはもう最高の気分であった。求めていた系統のホラー作品だったし、超・おもしろかったのである。あまりにも好きな系統の作品に出会えたことで気分が良くなり、なぜこんなに刺さったのか?そもそも自分の好きな系統のホラーってなんだ?ということを考え出してしまった。

 

まず第一に、として挙げるものが”これがあって良い”ではなく、”これがなくて良い”になってしまうのが若干申し訳ない気もするが、「こういう展開や演出をされると冷める」と感じるようなものが徹底的に排除されているように感じた。

 

なんといっても!ジャンプスケアが、ない!!わたしはジャンプスケアが苦手だ。それに当たりたくないから映像作品を見ないまであるのだ。だって、それをされたらびっくりする(小学生並の感想)し、「それがお前らのやり方かーーーー!!!!!」と思ってしまうのである。

ちょっと白熱してしまったが、さらに一本が25分ほどのドラマというのもあってテンポの良さが絶妙。メインキャラクターである江尻さんの謎解きパートも淡々としていて、真相をもったいぶるような引き伸ばし感もない。無駄がなくて、見せたいもの、真相に近づくために必要なことと、視聴者が息継ぎができるぐらいのコメディ要素少々…をギュっとまとめてくれている。目が肥えているわけではないからよくわからないのだけれど、そのまとめ方も実に綺麗なものだったと思う。

 

わたしはホラー小説は大好きだが、ホラー映画などの映像作品はほとんど見ない。

ジャンプスケアやビックリ系もそうなのだが、グロテスク系とかすぐ血が流れるような痛そうな系統も苦手だし、人の悪意を見て胸糞悪くなりたいわけでもない。かといって幽霊が襲ってくるものも、何かちょっと違う気がしている。「フィクションとしては面白い話だったけど、結局ありえないよねえ」と思ってしまうと、個人的なホラー作品を見る目としては冷めてしまうのだ。一応保険をかけておくが、これはあくまで個人的な好みの話である。

 

ここからは”これがあって良い”側の話になるが、1話を見た時に「ほ〜ん、今風のB級ホラーっぽい感じですなあ」だったのが、後半で「おおそういうテイストのホラー作品なのか、いいじゃん」になった理由でもある。

 

ぱっと見、結構昔からよくありそうな”B級つくりものホラー”的な雰囲気で、おあつらえ向きに怪奇現象的なことが起こるのだが、そのおかしなことにはすべて人的原因や、機械の仕様とか、そういう現実的な理由があるのだ。これである。わたしが求めるリアルなホラーの”リアル”というものは、特殊メイクや舞台装置や幽霊や怪奇現象を表現するCGのクオリティではなかった。

だってわたしは目に見えないものを見ることはできないし、猟奇的な現場に居合わせることもないし、近くに山も森も海もない。だから「共感できない」と言うとちょっとチープに思えるが、そもそもその演出や表現がリアルかどうかの判別なんて、あんまりつかないのだ。

 

このドラマがそのカテゴリーに位置するのかはわからないけれど、基本的にフェイクドキュメンタリー系が好きなのだ。「自分には起こらないと思うけど、全然ありえなくはないホラー」、みたいなのが好きなのだけれど、そういうものの多くはミステリーに位置するのだろうか。わ、わからん…。

 

さらに、それを謎を解き明かしていくぞ!というテンションではなくて、動画編集者の目線で見ることで、前半パートの『投稿動画』にある”綻び”的な部分に気がつくことによって淡々と真相が判明していく感じ、なのも良い。疑問点はすべて解決して、その上でちょっとイイ話みたいにしているのだが、それがなんだか嫌味でないのがすごい。わたしはちょっとイイ話で終わられると、「けっ、洒落臭いのう」と思ってしまうヤなやつなのだが、このドラマのオチにはそうは思わなかった。なんでだろう。ふしぎ。すごい。

 

1話1話は独立した短編集みたいな感じなのだが、それぞれの短編は枝みたいな感じであって、江尻さんの編集部屋では実は1つのストーリーが進んでいっているというのも、これまたとても好きな構成。

小説で言うと、『火のないところに煙は』や、『近畿地方のある場所について』なんかもそういう構成と言って良いのだろうか。この2冊もまた、うわー好き!!と思ったお気に入りのホラー作品である。

 

話は変わるが、フェイクドキュメンタリー系で気になりつつもまだ見ていなかった『フェイクドキュメンタリーQ』もこの機にいくつか見てきたのだが、それでもうひとつわかったことがある。

謎解きまでやってほしい。真相まで提示してほしい。のである。

『フェイクドキュメンタリーQ』の作品は、『この動画は再生できません』で言うところの投稿動画の部分に該当するだろう。そこから自由に考察する楽しみがあるのが『フェイクドキュメンタリーQ』、そこからの推理も含めてストーリーにしてくれているのが『この動画は再生できません』になるだろうか。

 

実は、この感覚に近しいものを過去にも一度感じたことがあった。『近畿地方のある場所について』を読んだ時だ。この作品は、いろいろなところから集めた情報をもとにあるひとつの意図が形成されているような作品なのだが、真相までは教えてくれない。むしろだからこそ、それを考察する楽しみが生まれているように思う。

個人的に、対するは『残穢』、そして『変な家』や『変な絵』の『変な〇〇シリーズ』である。

 

このどれもがフェイクドキュメンタリー系と言って良い…とわたしは思っているが、前者は真相はあなた次第系、後者は真相解明まで含めてひとつの話になっている系。もっと言えば、筆者が真相解明に奔走してくれる系、である。どちらが好きかは完全に好みの話になるし、わたしはどちらも好きだけれど、どちらかと言うと真相解明までしてほしいかなあ…でも、その注釈いらんか?と思うぐらいにはどちらも好きなのである。

ホラーに限らず、散りばめられたものたちがじわじわと繋がっていく感覚が好きなのかもしれない。短編をのうのうと楽しんでいる間に、気がつかない間に、いつの間にか大きな流れに囲まれていた、みたいな体験を求めているのかも。それで、その流れがきれいに終着に向かっていく様を見ることができた時、なにかものすごい快感を得ている気がする。いや、やっぱりミステリー寄りなのだろうか。わ、わからん…。

 

すっかりわたしの好きなホラーの系統についての話になってしまったが、どんなホラーが刺さりがちなのかをまとめてみる。

ビックリ系や、いたずらに嫌悪感を抱かせるものではなくて、現実には絶対起こりえないと思うような世界観や能力を持った人物が事件をどうにかする系でもない。それよりも、自分が想像できる範囲の光景の中で起こり得る、イメージできるような現実的なこと。を、肉付けしすぎずに淡々と調査・推理していくようなフェイクドキュメンタリー。いろいろな事件は断片であって、それらが繋がってひとつの意図が見えてくる。

みたいなやつ。これは…一体何系なんだろうか…。ホラー要素とミステリー要素の配合具合で好き度合いが決まるような気もする。

 

話をどうまとめようか焦ってきたのだが、つまりフェイクドキュメンタリー系のホラーたくさん増えて欲しい〜〜〜〜ということである。

 

わたしはテレビをほぼ全く付けないのだけれど、もうホラー系の、特にバラエティ番組は絶滅しているんじゃないだろうか。昔よく見た心霊写真も体験談も、わかりやすいホラーは作り物なのだとどの世代も分かってしまった。写真の編集も動画の作成もすっかり一般的な技術になったから、フェイク品を掲げて「これは視聴者から投稿されたもので、ヤバいものが写っています!!」でスタジオ絶叫!というのは通用しないし、むしろ視聴者の温度とスタジオの温度の差が、さらに冷める要因になってしまったのだろう。たぶん。

 

ここしばらくは、「作り物という前提で見て、いかに楽しめるか」の方が優勢になっている気がしている。たぶん、Vtuberとかもその類なんじゃないだろうか。自分達が見ているものはあくまで”ガワ”であることを了承した上で、それを演じる配信者や他の視聴者たちとの空気感を楽しむ、みたいな。

ことホラーに関しては、たぶんこういう気持ちになるのだろう。「この作品はフィクションだし有り得ないけど…まさか…ね…」。

 

わたしがもっとホラーやいろいろなものに詳しければ、この作品からこういう流れが生まれて、今の流れはこんな感じになっているよね、とか語れたのだろうか。く、悔しい…。

というタラレバを言っていても仕方ないので、これを書いている時に偶然見つけた直近のYahooニュース記事を載せてお茶を濁してゆく。

news.yahoo.co.jp

 

小説でも映像でもやろうと思えば誰でも作品を発表できる時代に、それを上手に活用して工夫して、面白いものを作ってくれている誰かがいてくれる今に、感謝…!!!

お相手はおわびでした、また今度。